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理化学研究所 統合生命医科学研究センター

研究内容research Projects

当研究室では、免疫の司令塔である樹状細胞に焦点をあて、自然免疫-獲得免疫-記憶免疫の連鎖機構の解明、疾患病態における免疫異常、破綻に関する研究を行っています。同時に基礎研究の成果を踏まえ、がんや感染症などの難治性疾患の予防や治療法の開発研究を推進しています。

I. 研究概要 樹状細胞を中心とした免疫制御の解明

I
I. 研究背景 (基礎研究)

(1)自然リンパ球を起因とする生体内樹状細胞の活性化とその細胞間シグナル

. これまでの研究内容

(1)自然免疫と獲得免疫の両者を誘導する新規がん細胞療法(エーベック)の開発
    人工アジュバントベクター細胞による治療効果
②  「人工アジュバントベクター細胞」の免疫メカニズム

IV. 現在の研究内容

1)腫瘍微小環境における免疫研究
(TME: tumor microenvironment)


2)長期記憶抗腫瘍T細胞誘導とメカ
ズム研究
 

3)エーベックによる抗インフルエンザ
イルス療法


4)自然リンパ球の記憶化に関する
研究


(5)iPS由来リンパ球細胞


 V. 現在進めている臨床試験 (トランスレーショナル研究)

(1)WT1抗原を発現した人工アジュバントベクター細胞(エーベックWT1)を用いた医師主導型治験


(2)NKT細胞癌免疫療法の免疫評価 (国立病院機構第II相試験のモニタリング)




I. 研究概要   樹状細胞を中心とした免疫制御の解明

 
生体防御を担う免疫系には、抗原非特異的に初期防御を担う「自然免疫」
細胞性免疫応答によって特定の異物を強力に排除する「獲得免疫」があります。
 自然免疫は、外界からの病原体の侵入や病原体に感染した細胞やがん細胞など異常をきたした細胞に、最初に応答する免疫システムです。自然免疫の細胞には、この異常細胞を殺傷するナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)とナチュラルキラー(NK細胞)、ガンマデルタT細胞(gdT細胞)などや病原体や死細胞を貪食するマクロファージ、好中球、樹状細胞(dendritic cell; DC)、他に寄生虫感染やアレルギーの際に反応するナチュラルヘルパー(NH細胞)などがあります。「獲得免疫」は、B細胞やT細胞などのリンパ球由来の抗体や多様な細胞性免疫応答によって特定の異物を強力に認識し排除する機能を有し、両者が協調して働いています。
 この「獲得免疫」と「自然免疫」の両者をコントロールしているのは樹状細胞であり、体表面、特に皮膚や気道、腸管、リンパ組織、血液、リンパ管などさまざまな臓器に“見張り番”として分布しています。末梢組織で外来抗原を捕捉した樹状細胞がリンパ組織へ遊走した後に、異物を貪食し分解した断片の抗原をペプチドとして細胞表面に提示し、抗原未感作の状態のナイーブT細胞と接触することで、抗原特異的なキラーT細胞を誘導します。この抗原特異的T細胞誘導の際に、樹状細胞からT細胞へ幾つかの相互シグナルが伝達されます。特に、抗原情報(シグナル1)のみならず、樹状細胞表面上に発現している共刺激分子(シグナル2)、及び樹状細胞の産生する炎症性サイトカインIL-12(シグナル3)が重要です。このようにして活性化キラーT細胞が誘導され、局所へ遊走し同じ抗原を持つ異物を再度認識して強力に攻撃することが出来るようになり、がん、感染症の発症が防御できることになります(図1)。しかしながら、このような免疫応答は、担がん状態では容易には作動しません。
 我々は、生体内に存在する樹状細胞機能を最大限利用できるように研究を進めています。特に、生体内での免疫応答は4次元的におこるため、in vitroの実験が生体内を反映していないことも多い訳です。また、生体内の免疫応答は、複数の細胞集団が連鎖的にダイナミックに反応するため、そのメカニズムの解析を行っています。

図1  樹状細胞の働き
樹状細胞は、未感作のT細胞に外来性異物由来の抗原を認識させるように教育し、活性化させることが出来る唯一のプロフェッショナルな抗原提示細胞である。

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II. 研究背景 (基礎研究)


 自然リンパ球と樹状細胞の相互活性を中心とした自然免疫による免疫応答開始から、獲得免疫、記憶免疫への誘導機構における免疫連鎖に着目した基礎研究と、それを利用した免疫療法についてのトランスレーショナル研究を進めています。特にこのような免疫系を人為的に効率的に動かす為に、生体内に存在する樹状細胞機能を最大限利用できる人工アジュバントベクター細胞(artificial adjuvant vector cells(エーベック)) を考案したので、紹介します。
 

(1)自然リンパ球を起因とする生体内樹状細胞の活性化とその細胞間シグナル

樹状細胞の活性化は、従来Toll様シグナルを受けることにより活性化されると知られてきました。しかしながら、我々は2003年にNKT細胞が樹状細胞を細胞間のシグナルを得て活性化させる現象を世界で最初に発見しました。
  NKT細胞は自然免疫リンパ球の一種で、T細胞とNK細胞の両方の受容体を発現している免疫調節細胞です。リンパ節には少ないものの、主に肝臓、脾臓、肺、骨髄などの臓器に存在します。T細胞受容体(TCR)a鎖に可変性のないインバリアント鎖(マウスではVa14Ja18、ヒトではVa24Ja18)を発現するNKT細胞、通称iNKT細胞は、CD1d分子上に提示された糖脂質抗原を認識します。その代表的な糖脂質抗原がa-GalCerです。CD1d分子はヒトにおいては同一で、マウスーヒト間でも相同性が高く、ヒトiNKT細胞もマウスiNKT細胞と同様にa-GalCerを認識して活性化します。iNKT細胞が生体内で活性化すると図2に示すように樹状細胞の成熟化を始め、複数の免疫細胞が活性化されることがマウスモデルで分かりました3, 4)。また、ヒトiNKT細胞もin vitroや免疫不全マウスに移植した実験系で同様の免疫応答を起こします。つまり、マウスモデルでの研究がヒトの臨床応用に反映し得ると言えます。

図2 iNKT細胞は抗原刺激やIL-12などの炎症性サイトカインにより短時間で大量のサイトカイン(特にIFN-)を産生し、直接抗腫瘍活性を発揮する。また、生体内においてiNKT細胞の活性化後に起こる二次的樹状細胞の成熟化は他の免疫担当細胞の活性化を促進し、免疫カスケードを動かす2,3)。この樹状細胞の成熟化のメカニズムとしては、iNKT細胞から産生されるサイトカイン(TNF-IFN-NKT細胞に発現するCD40Lのシグナルが鍵を握る4)。成熟化の過程で蛋白抗原に曝露されると生体内樹状細胞はその抗原を取り込み、iNKT細胞の活性化により成熟化をおこし、抗原特異的なT細胞誘導を可能にする。このような成熟化樹状細胞の特徴としては ①樹状細胞の表面マーカーの成熟化:MHCクラスIIIの強発現、CD40CD70CD80CD86などの共刺激分子や接着分子の強発現、②アロリンパ球混合反応(MLR)刺激能の増強、③炎症性サイトカイン(IL12)T細胞を引き寄せるケモカイン(CCL17)の産生5)、④抗原特異的なT細胞免疫応答誘導の4項目があげられる1)

References

1.       Fujii S, Shimizu K, Kronenberg M and Steinman R.M. Prolonged IFN-g-producing NKT response induced with a-galactosylceramide-loaded DCs. Nat Immunol. 2002, 3: 867-874.

2.       Fujii S, Shimizu K, Steinman RM, and Dhodapkar MV. Detection and activation of human Va24+NKT cells using a-galactosylceramide-pulsed dendritic cells. J Immunol Methods. 2003, 272: 147-159.

3.       Fujii S, Shimizu K, Smith C, Bonifaz L, and Steinman RM. Activation of natural killer T cells by a-galactosylceramide rapidly induces the full maturation of dendritic cells in vivo and thereby acts as an adjuvant for combined CD4 and CD8 T cell immunity to a co-administered protein. J Exp Med. 2003, 198: 267-279.

4.       Fujii S, Liu K, Smith C, Bonito AJ, and Steinman RM. The linkage of innate to adaptive immunity via maturing dendritic cells in vivo requires CD40 ligation in addition to antigen presentation and CD80/86 costimulation. J Exp Med. 2004, 199: 1607-1618.

5.       Munz C, Steinman RM, Fujii S. [commentary] Dendritic cell maturation by innate lymphocytes: coordinated stimulation of innate and adaptive immunity. J Exp Med. 2005, 202:203-207.

6.       Liu K, Idoyaga J, Charalambous A, Fujii S, Bonito A, Mordoh J, Wainstok R, Bai XF, Liu Y, Steinman RM. Innate NKT lymphocytes confer superior adaptive immunity via tumor capturing dendritic cells. J Exp Med. 2005, 202: 1507-1516.

7.       Fujii S, Shimizu K, Hemmi H, Fukui M, Bonito AJ, Chen G, Franck RW, Tsuji M, Steinman RM. Glycolipid a-C-galactosylceramide is a distinct inducer of dendritic cell function during innate and adaptive immune responses of mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 2006, 103:11252-11257.

8.       Fujii S, Shimizu K, Hemmi H, Steinman RM. [Review] Innate Valpha14(+) natural killer T cells mature dendritic cells, leading to strong adaptive immunity. Immunol Rev. 2007, 220:183-98.


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III. これまでの研究内容


(1)自然免疫と獲得免疫の両者を誘導する新規がん細胞療法、エーベックの開発

 がんワクチンは、手術、化学療法、放射線療法に対して抵抗性を示すがんに対するがん治療、更に再発予防療法として利用できますが、それぞれ課題があります。例えば、細胞療法の一つの樹状細胞療法では、効率的な樹状細胞成熟化が難しく、患者由来の樹状細胞採取や樹状細胞培養工程に困難が伴い、培養工程等に起因する高額な医療費も問題です。ペプチドワクチン療法では、HLA拘束性のため、患者が限定されるとともに、CD8T細胞の誘導だけでは、臨床効果が不十分な症例も見られます。そこで、私達の研究室では従来の癌ワクチンの問題点を解消し、自然免疫・獲得免疫さらには記憶免疫を誘導できるがんワクチンの開発研究を進めてきました。
 
応用研究といっても、その根本となるコンセプトは基礎研究の中から生まれるものです。この「エーベック」のコンセプトも、背景に述べた生体内における活性化NKT細胞と樹状細胞の相互作用を研究する中から生まれました。活性化NKT細胞が樹状細胞の成熟化、さらには獲得免疫を誘導する免疫機構を最大限利用した癌ワクチンの開発に取り組んできました。その結果、CD1d発現細胞に腫瘍抗原とNKTリガンド(α-GalCer)を同時に発現させることにより、NK細胞、NKT細胞などの自然リンパ球の活性化と抗原特異的なT細胞を最も効率良く誘導し、抗腫瘍効果を示すことがわかってきました。このような2つの抗原を発現している細胞は、標的抗原(蛋白抗原と糖脂質抗原)を同時に生体な樹状細胞へ運びうる「ベクター」機能を有する細胞であり、樹状細胞を活性化・成熟化させる「アジュバント」との機能を併せ持つということで「アジュバントベクター細胞」と名付けました。もっとも簡単なモデルは、細胞そのものががん抗原を発現している腫瘍細胞(tumor/Gal)を利用した自家アジュバントベクター細胞モデル(自家エーベック)です。更にこの細胞を他家細胞を利用して、汎用化できるように改良したのが「人工アジュバントベクター細胞(エーベック)」です。
  免疫機構からの点から見ると、この2つの自己細胞由来、或いは他家細胞由来のアジュバントベクター細胞を用いたワクチンは、生体内樹状細胞の働きを最大限高めるため、生体内樹状細胞標的療法と言えます。また、この細胞を一度投与するだけで、獲得免疫から記憶免疫まで誘導できることを報告してきました。

   人工アジュバントベクター細胞(エーベック)による治療効果

アロ細胞株であるNIH3T3CD1d強発現させた細胞株をベクター細胞としてa-GalCerをパルスし、OVAmRNAを遺伝子導入することによりアジュバントベクター細胞(エーベック)を作製しました。エーベックワクチンの効果をB16 肺転移モデルおよびMO4(OVA発現メラノーマ) 皮下接種モデルで評価しました。肺転移モデルでは、エーベック免疫群では腫瘍は拒絶され、NKT欠損マウスやNK除去マウスでは拒絶されないことから自然免疫による抗腫瘍効果です。一方、ワクチン後2週間後にMO4を皮下接種すると、腫瘍が拒絶され、これはCD4, CD8T細胞欠損では腫瘍が増大することから獲得免疫による抗腫瘍効果だと言えます。よって、同系腫瘍ワクチンと同様の効果をNKTリガンドと抗原を発現させたアロ細胞ワクチンで得ることができることが証明されました(図3)。

図3 マウスエーベックを用いたマウスモデルでの自然免疫と獲得免疫を誘導し得る抗腫瘍効果

Fujii S*, Goto A, Shimizu K. Antigen mRNA-transfected, allogeneic fibroblasts loaded with NKT-cell ligand confer antitumor immunity. Blood 2009, 113:4262-72.


② 人工アジュバントベクター細胞(エーベック)の免疫メカニズム

エーベックは、キラーT細胞の標的となるがん抗原と、NKT細胞を活性化する糖脂質(アルファ-ガルセル)を付着させるタンパク質CD1dを持つ任意の細胞に、糖脂質を付着して作られる細胞の総称です。CD1dを介してエーベックに付着した糖脂質がNKT細胞を活性化させますが、エーベック自体は体内で破壊されて樹状細胞に取り込まれます。活性化NKT細胞が樹状細胞の成熟化を促進します。成熟化樹状細胞は、取り込んだ抗原をT細胞に提示し、抗原特異的なT細胞を誘導します。この一連の反応によって体の中の樹状細胞の働きを最大限に強化され、自然免疫、及び獲得免疫の両輪を回すワクチンとして機能します(図4)。

図4 エーベックの効果メカニズム
Fujii S and Shimizu K. Exploiting antitumor immunotherapeutic novel strategies by deciphering the cross talk between invariant NKT cells and dendritic cells. Front Immunol. 2017, 8:886.
*Fujii S and Shimizu K. Immunotherapy with artificial adjuvant vector cells (aAVCs): harnessing both arms of the immune response. OncoImmunol 2013, 2:e23432.


Reference

1.       Shimizu K, Asakura M, Shinga J, Sato Y, Kitahara S, Hoshino K, Kaisho T, Schoenberger SP, Ezaki T, Fujii S. Invariant NKT cells induce plasmacytoid dendritic cells (DCs) cross-talk with conventional DCs for efficient memory CD8+ T cell induction. J Immunol 2013,190:5609-5619.


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IV. 現在の研究内容


1)腫瘍微小環境における免疫研究(TME: tumor microenvironment)


 一般にワクチンから抗腫瘍キラーT細胞誘導に成功した、或いは抗腫瘍キラーT細胞を輸注した場合でも、腫瘍組織にこれらの細胞が遊走し抗腫瘍活性を発揮しなければ腫瘍を退縮させることはできません。そこで、エーベックによりマウス悪性黒色腫細胞(卵白アルブミンOVA抗原を発現するMO4がん細胞)を用いてMO4担癌マウスのがん治療効果を検証しました。通常の治療法では抑制できない大きさの腫瘍サイズに達した時期にOVA抗原を発現したエーベック(aAVC-OVA)を静脈内投与で治療すると、腫瘍内が壊死を起こし、縮小することが判明しました(図5)。腫瘍組織内の変化を詳細に調べたところ、樹状細胞と抗腫瘍T細胞が多数集積していることがわかりました(図右;Cancer Research表紙に採用)T細胞などリンパ球が血管から組織へ遊走するためには、血管内皮細胞にICAM-1VCAM-1どの接着因子の発現が必要です。しかしながら通常、腫瘍血管は正常な血管とは異なりこのような接着因子が発現していません。ところが、エーベック治療群のマウスでは腫瘍血管が接着因子を強発現し、その周囲に存在する樹状細胞がCXCL10というケモカイン発現することで活性化リンパ球を集めることができることが判明しました。エーベックシステムの知見を踏まえ、腫瘍血管の正常化およびTMEのリプグラミングの解明をテーマに研究を行っています。



図5 腫瘍微小環境における抗腫瘍効果
Shimizu K, Yamasaki S, Shinga J, Sato Y, Watanabe T, Ohara O, Kuzushima K, Yagita H, Komuro Y, Asakura M, and Fujii S*. Systemic DC activation modulates the tumor microenvironment and shapes the long-lived tumor-specific memory mediated by CD8+ T cells. Cancer Res 2016, 76:3756-66.


2)長期記憶抗腫瘍T細胞誘導とメカ二ズム研究

 一般にワクチンの効果として、一時的なエフェクター細胞の誘導に留まるだけでなく、長期に渡るメモリーT細胞が誘導できるかどうかは、その再発予防と言う面で重要なポイントです。そこでOVA抗原を発現したエーベック(aAVC-OVA)をマウスに投与し1年後に解析したところ、全身性に、リンパ組織(リンパ節、脾臓・骨髄)だけではなく、非リンパ組織(肺・肝臓)にもメモリーキラーT細胞が維持されており(図6)、再度同じ抗原に遭遇すると、このメモリーT細胞は増幅できることがわかりました。エーベックシステムの知見を踏まえ、メモリーT細胞の誘導解明をテーマに研究を行っています。



図6 エーベックによる長期抗腫瘍T細胞効果
Shimizu K, Yamasaki S, Shinga J, Sato Y, Watanabe T, Ohara O, Kuzushima K, Yagita H, Komuro Y, Asakura M, and Fujii S*. Systemic DC activation modulates the tumor microenvironment and shapes the long-lived tumor-specific memory mediated by CD8+ T cells. Cancer Res 2016, 76:3756-66.


3エーベックによる抗インフルエンザウイルス療法

ウイルス特異的抗体産生は、インフルエンザウイルス、HIVおよびヒトEBウイルス(HPV)をはじめとする多くのウイルス病原体の感染を制御して、生体を保護することが知られています。ウイルスに対するワクチン効果を成功させるには、ワクチン接種後の長期抗体産生を誘導することが必要です。その為には、適切な抗原とアジュバントの組み合わせを選択することが重要で、我々の開発したエーベックは、長期間の細胞性免疫のみならず、体液性免疫を誘導することができる特徴を有しております。
 我々は、エーベックワクチン接種により、抗体産生に重要な胚中心が形成され長期抗体産生が誘導されることを見出しました。これらの反応において、成熟XCR1-DCが抗原特異的CD4+ T細胞だけでなくCD4+ Tfh細胞を活性化させていることを明らかにしました。そこでこの知見を踏まえて、我々は、ウイルス病原体による感染症に対する新しいエーベックの開発を進め、インフルエンザヘマグルチニン(HA)を保有するaAVC(エーベックHA)の作製に成功しました。aAVC-HAをワクチン接種した全てのマウスにおいて、ヘマグルチニン特異的抗体の産生が確認され、これらのワクチン接種マウスでは致死量のインフルエンザ感染に対しても防御効果を示しました(図7)。今回得られた結果により、エーベックワクチンによる生体内樹状細胞をターゲットにした療法が、ウイルス感染に対する防御に有用であることが示唆されました。このような知見から他のウイルスを標的としたエーベックワクチン応用の可能性を検討しております。




図7 インフルエンザウイルスに対するエーベックワクチン療法
Yamasaki S, Shimizu K, Kometani K, Sakurai M, Kawamura M, and Fujii S*. In vivo dendritic cell targeting cellular vaccine induces CD4+ Tfh cell-dependent antibody against influenza virus. Sci Rep 2016, 6:35173


4自然リンパ球の記憶化に関する研究
 
自然リンパ球として知られる、NK細胞、
gdT細胞、NKT細胞は、免疫学的に非特異的、即時的作用すると考えられてきましたが、近年、前者2種類の細胞は、抗原に反応する記憶免疫サブセットが同定されております。一方では、NKT細胞の記憶免疫に関しては、即効性にがんなどの細胞を傷害する働きをもつものの、長期に生存して抗原を記憶する働きはないと考えられており、これまで報告がありませんでした。
 そこでa-GalCerをパルスした樹状細胞(DC/Gal)を投与後のマウスのNKT細胞のエフェクター機能を経時的に詳細に調べ、NKT細胞に記憶免疫様細胞が存在するか、という研究を行いました。その結果、感作刺激後9ヶ月以上という長期に渡って生存し、二度目の刺激に対して迅速かつ強力に反応する、記憶免疫様NKT細胞サブセットが存在することを発見しました。一方で、この記憶免疫様NKT細胞誘導は、上記エーベック作製の際に使用した「CD1d発現させa-GalCerを提示させたアロの線維芽細胞」と同様なNKT細胞を誘導しうるので、糖脂質抗原依存性で、ワクチンに用いた樹状細胞由来分子に依存した免疫反応ではない事も同時に明らかにしました(図8)。
 記憶免疫様NKT 細胞の特徴を調べたところ、細胞表面にキラー細胞レクチン様受容体サブファミリーGメンバー1KLRG1)を発現していること、抗腫瘍作用をもつサイトカインIFN-gを多く産生すること、TCRレパトア解析によって特定のクローンの蓄積が認められることがわかりました。さらに、記憶免疫様NKT 細胞の抗腫瘍作用を検証しところ、DC/Gal免疫後、4ヶ月後にマウスB16悪性黒色腫を静脈内投与した肺転移モデルで黒色腫の転移の抑性が認められました。この抗腫瘍作用が、主に記憶免疫様NKT細胞の関与によることを確認しております。自然免疫リンパ球と考えられていたNKT細胞も、このような特徴をもった記憶免疫様NKT細胞が存在することを示した新しい発見です(図9)。 現在はNKT細胞の記憶化の分子生物学的機構の解明をテーマに研究を行っています。



図8 NKT細胞と記憶免疫様NKT細胞
α-GalCerを持つ樹状細胞(DC/Gal)をマウスに投与すると、NKT細胞(オレンジ)が活性化し、抗原を排除できるまで増幅する。すると、その中で抗原情報を記憶する記憶免疫様NKT細胞に分化するもの(青)が現れ、抗原排除が完了しても、長期にわたり存在し続ける。


図9 記憶免疫様NKT細胞の抗原特異性
α-GalCerを持つ樹状細胞(DC/Gal)をマウスに投与した2か月後、DC/Galを再投与するケースとは別に、NKT細胞が抗原認識する別の糖脂質(iGB3GSL)を持つ樹状細胞(DC/iFB3DC/GSL)を再投与した。DC/Gal再投与で記憶免疫様NKT細胞は急激に増え、投与量を1/10に減らしても強力だった。一方、DC/iFB3DC/GSLを再投与しても記憶免疫様NKT細胞は大きく増えなかった。

Shimizu K, Sato Y, Shinga J, Watanabe T, Endo T, Asakura M, Yamasaki S, Kawahara K, Kinjo Y, Kitamura H, Watarai H, Ishii Y, Tsuji M, Taniguchi M, Ohara O, Fujii S*. KLRG+ invariant natural killer T cells are long-lived effectors. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014, 111:12474-9.

(5iPS由来リンパ球細胞

我々はiPS細胞技術を利用して、NKT細胞への分化能力を持つ多能性幹細胞を無制限に増殖させた後、治療に十分(質と量)なNKT細胞を分化誘導し供給できるのではないかと考えました。そこで、iPS細胞技術を利用して、ヒトNKT細胞から抗がん効果の高いiPS細胞由来のNKT細胞(iPS-NKT細胞)を安定的かつ大量に作製する方法を確立し、そのヒトiPS-NKT細胞の抗腫瘍効果をマウスの生体内で示すことに成功しました。


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V. 現在進めている臨床試験 (トランスレーショナル研究)


(1)WT1抗原を発現した人工アジュバントベクター細胞(エーベックWT1)を用いた医師主導型治験


 従来の細胞療法は患者本人の自己血液由来の細胞を採取するオーダーメード療法だったため、医薬品としての開発が困難でした。その点、エーベックは、品質の安定化を図ることができ、医薬製剤化が期待できるプラットフォームです。エーベックにより樹状細胞の活性化が起こることで、がん局所での免疫環境を好転させることと記憶免疫を全身性に誘導できることは、がん治療に対する新しい作用機序です。これらの発見は、本がん治療製剤が医療に向けて新しい効果を期待できることを意味します。
  再生医療等製品として簡便に提供できることを考慮し、放射線照射した他家細胞を用いて誰にでも使用できることを目指し、WT1抗原を標的としたヒト型のWT1抗原発現エーベックを先行して開発を行ってきました(図11)。本研究は、2009年より東京大学橋渡し拠点と理化学研究所創薬プログラムの両方の支援により医師主導治験を目指して進めてきました。また、2011年からはPMDAとの薬事戦略相談を17回にわたり重ねてきました。この長年にわたる薬事戦略相談が終了し、PMDAに治験計画届出を行い、実施可能となったため、現在「再発または治療抵抗性急性骨髄性白血病患者を対象としたWT1発現エーベック療法」の第I相試験を東京大学医科学研究所附属病院血液腫瘍内科との共同研究で実施しています。


図11 WT1抗原を標的としたヒト型のWT1抗原発現エーベックの開発

References

1. Fujii S, Goto A, Shimizu K. Antigen mRNA-transfected, allogeneic fibroblasts loaded with NKT-cell ligand confer antitumor immunity. Blood 2009, 113:4262-72.
2. Fujii S, Motohashi S, Shimizu K, Nakayama T, Yoshiga Y, Taniguchi M. [Review] Adjuvant activity mediated by iNKT cells. Semin Immunol. 2010, 22:97-102.
3. Ishii Y, Motohashi S, Shimizu K, Nakayama Taniguchi M, and Fujii S. [Review] Application of NKT cells in immunotherapy. Curr Immunol review. 2010,6:109-115
4. Shimizu K, Mizuno T, Shinga J, Asakura M, Kakimi K, Ishii Y, Masuda K, Maeda T, Sugahara H, Sato Y, Matsushita H, Nishida K, Hanada KI, Dörrie J, Schaft N, Bickham K, Koike H, Ando T, Nagai R, Fujii S. Vaccination with antigen-transfected, NKT cell ligand-loaded, human cells elicits robust in situ immune responses by dendritic cells. Cancer Res. 2013, 73:62-73.
5. Fujii S, and Shimizu K. Immunotherapy with artificial adjuvant vector cells: Harnessing both arms of the immune response. OncoImmunology 2013, 2:e23432.


(2)NKT細胞癌免疫療法の免疫評価 (国立病院機構第II相試験のモニタリング)

 千葉大学免疫制御学と呼吸器外科と共同研究で進めてきた肺がん非小細胞癌を対象としたNKTリガンドを用いたNKT療法(第IIIa相試験)の結果、自然免疫によるIFN-g産生能と臨床的予後が相関することが認められました。 現在、肺がんに対するNKT療法を発展させる為に、国立病院機構との共同研究のもとで肺癌術後再発予防を標的として第II相試験を進めています。私共は、臨床効果の検討の為に末梢血免疫モニタリングを行い、治療と免疫応答の相関を患者レベルで解析を進めています。

References
1.Fujii S, Shimizu K, Steinman RM, and Dhodapkar MV. Detection and activation of human Va24+NKT cells using a-galactosylceramide-pulsed dendritic cells. J Immunol Methods. 2003, 272: 147-159.
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3. Motohashi S, Ishikawa A, Ishikawa E, Otsuji M, Lizasa T, Hanaoka H, Horiguchi S, Okamoto Y, Fujii S, Taniguchi M, Fujisawa T, Nakayama T. A phase I study of in vitro expanded NKT cells in patients with advanced and recurrent non-small cell lung cancer. Clin Cancer Res. 2006, 202: 203-207.
4. Ishikawa F, Niiro H, Iino T, Yoshida S, Saito N, Onohara S, Miyamoto H, Minagawa H, Fujii S, Shultz LD, Harada M, Akashi K. The development program of human dendritic cells is operated independently of conventional myeloid and lymphoid pathways. Blood. 2007, 110:3591-660.
5. Okita K, Motohashi S, Shinnakasu R, Nagato K, Yamasaki K, Sato Y, Kitamura H, Hijikata A, Yamashita M, Shimizu K, Fujii S, Ohara O, Taniguchi M, Sakaida I, Nakayama T. A set of genes associated with the interferon-γ response of lung cancer patients undergoing α-galactosylceramide-pulsed dendritic cell therapy. Cancer Sci. 2010, 101:2333-40.
6. Fujii S, Motohashi S, Shimizu K, Nakayama T, Yoshiga Y, Taniguchi M. [Review] Adjuvant activity mediated by iNKT cells. Semin Immunol. 2010, 22:97-102.
7. Nagato K, Motohashi S, Ishibashi F, Okita K, Yamasaki K, Moriya Y, Hoshino H, Yoshida S, Hanaoka H, Fujii S, Taniguchi M, Yoshino I, Nakayama T. Accumulation of activated invariant natural killer T cells in the tumor microenvironment after α-galactosylceramide-pulsed antigen presenting cells. J Clin Immunol 2012, 32:1071-81.

これまでの研究の紹介

①白血病に対する樹状細胞療法臨床試験 (ex vivo樹状細胞療法とその問題点)

 我々の以前施行した慢性骨髄性白血病(Chronic Myelogenous Leukemia)における白血病由来樹状細胞療法を紹介しますCML第9番染色体と第22番染色体の長腕間の相互転座の結果生じるPh1染色体を有し、bcr/abl融合遺伝子の遺伝子産物であるbcr-ablチロシンキナーゼが白血化をもたらす疾患です。2001年に分子標的治療薬であるイマチニブが承認される以前は、抗がん剤(ハイドロキシウレア)やIFN-a, 骨髄移植が主な治療法で、治療成績も芳しくありませんでした。
  一方で、CML細胞自体は癌抗原として複数の抗原(bcr-abl, hTERT, proteinase3 (PR3), WT-1など)が同定されており、患者さんにおいてもこのような抗原エピトープに反応するT 細胞が存在することも報告されています。私共も、健常人、CMLIFN-a療法不応群、反応群、寛解群でRT-PCR-SSCP法でT細胞レセプターレパトワーの解析を行いました(図1)。その結果、健常人や不応群では図のようにスメア状になりますが、反応群、寛解群ではオリゴクローナルなバンドが検出され、T細胞クローンの集積が認められました。治療反応性とT細胞の免疫応答の関連を示唆するデータを得ることができました(shimomura T et al Br J Haematol, 1999)


図1

 
 またCML幹細胞から培養誘導した樹状細胞(leukemic DC)Ph1陽性でこのようなleukemic DCを用いるとin vitroCML特異的なCD4Th細胞、CTLが図2(図2左下)のように誘導できることを確認しました。そこでイマチニブが治療薬として用いられる以前の1996-1998年にCML症例のT細胞の解析および樹状細胞療法(leukemic DCの臨床応用研究を行いました
 実際に、骨髄移植非適応例にこのPh1陽性leukemic DCを投与すると、一年半に渡って無治療で経過した症例を経験しました(図2上図)。この症例を詳細に解析したところ、樹状細胞療法後にIFN-g産生性CD4T及びCD8T細胞の増加が認められること、CTLレパトワーの解析からIFN-a療法効果群の場合とは異なるパターンのクローンが同定できることが判明しました(図2右下図)。この新たに出現したバンドは、in vitroで誘導できたCTLクローンとシークエンスレベルでも一致しており、DC療法により機能的に有効なCTLが誘導され、in vivoで増幅できることを示す最初の報告です(Fujii et al Jpn J Cancer Res, 1999)。しかしながら、本症例のCTLクローンも一年半後には消失してしまいました。この免疫療法を省みると、ex vivo 樹状細胞療法の問題点、またエフェクターT細胞だけではなく、自然免疫リンパ球(NK細胞やNKT細胞など)やメモリーT細胞を誘導させる必要性を痛感しました。



図2


References

1.       Fujii S, Fujimoto K, Matsui K, Kawakita M, and Takatsuki K. Induction of antitumor cytotoxic activity using CD34+ cord blood cell-derived and irradiated tumor cell-primed dendritic cells. Int J Hematol. 1998, 68:169-182.

2.       Fujii S, Fujimoto K, Shimizu K, Ezaki T, Kawano F, Takatsuki K, Kawakita M, and Matsuno K. Presentation of tumor antigens by phagocytic dendritic cell clusters generated from human CD34+ hematopoietic progenitor cells: Induction of autologous cytotoxic T lymphocytes against leukemic cells in acute myelogeneous leukemia patients. Cancer Res. 1999, 59: 2150-2158.

3.       Simomura T, Fujii S, Ezaki I, Osato M, Fujimoto K, Takatsuki K, Kazuhiko Y, and Kawakita M. Characterization of T cell receptor b chain mRNA expression in IFN-a-responsive chronic myelogeneous leukemia patients. Brit J Haematol. 1999, 105: 173-180.

4.       Fujii S, Shimizu K, Fujimoto K, Shimomura T, Taniguchi O, Kinoshita M, and Kawano F. Analysis of a vaccinated chronic myelogenous leukemia patient with leukaemic dendritic cells following autologous peripheral blood stem cell transplantation. Jpn J Cancer Res. 1999, 90:1117-1129.

5.       Fujii S. [Review] The interaction between interferon-a and clonally expanded T cells in chronic myelogenous leukemia (CML). Leuk lymphoma. 2000, 38:21-38.

6.       Fujii S, Shimizu K, Fujimoto K, Kiyokawa T, Tsukamoto A, Sanada I, and Kawano F. Treatment of post-transplanted, relapsed patients with hematological malignancies by infusion of HLA-matched, allogeneic-dendritic cells (DCs) pulsed with irradiated tumor cells and primed T cells. Leuk Lymphoma. 2001, 42: 357-369.

② 自然免疫と獲得免疫の両者を誘導しうる癌治療モデルの確立

 がんワクチンは、手術、化学療法、放射線療法に対して抵抗性を示すがんに対するがん治療、更に再発予防療法として利用できますが、それぞれ課題があります。例えば、細胞療法の一つの樹状細胞療法では、効率的な樹状細胞成熟化が難しく、患者由来の樹状細胞の採取や樹状細胞の培養工程に困難が伴い、培養工程等に起因する高額な医療費も問題です。ペプチドワクチン療法では、HLA拘束性のため、患者が限定されるとともに、CD8T細胞の誘導だけでは、臨床効果が不十分な症例も見られます。そこで、私達の研究室では従来の癌ワクチンの問題点を解消し、自然免疫・獲得免疫さらには記憶免疫を誘導できるがんワクチンの開発研究を進めてきました。
 応用研究といっても、その根本となるコンセプトは基礎研究の中から生まれるものです。この「エーベック」のコンセプトも、背景に述べた生体内における活性化NKT細胞と樹状細胞の相互作用を研究する中から生まれました。活性化NKT細胞が樹状細胞の成熟化、さらには獲得免疫を誘導する免疫機構を最大限利用した癌ワクチンの開発に取り組んできました。その結果、CD1d発現細胞に腫瘍抗原とNKTリガンド(α-GalCer)を同時に発現させることにより、NK細胞、NKT細胞などの自然リンパ球の活性化と抗原特異的なT細胞を最も効率良く誘導し、抗腫瘍効果を示すことがわかってきました。このような2つの抗原を発現している細胞は、標的抗原(蛋白抗原と糖脂質抗原)を同時に生体な樹状細胞へ運ぶ「ベクター」であり、樹状細胞を活性化・成熟化させる「アジュバント」との機能を併せ持つということで「アジュバントベクター細胞」と名付けました。もっとも簡単なモデルは、CD1d発現腫瘍細胞(tumor/Gal)を利用した同系細胞モデルで、これについて次項で説明致します。
 免疫機構からみると、このアジュバントベクター細胞ワクチンは、生体内樹状細胞の働きを最大限高めるため、生体内樹状細胞標的療法と言えます。現在、マウスモデルではこの細胞を一度投与するだけで、獲得免疫から記憶免疫まで誘導できることがわかってきました。



図3 一つの細胞に抗原とNKTリガンド(a-GalCer)が最も効率良く自然免疫と獲得免疫が誘導できることは初めに同系腫瘍細胞を用いた実験結果から判明した。a-GalCerをパルスしたB16(B16/Gal)、またはa -GalCerをパルスしたCD1d強発現B16(CD1dB16/Gal)を静脈内投与し、肺転移を評価すると、a -GaCerをパルスしないコントロールに比べ、腫瘍は拒絶され、NKT欠損マウスやNK除去マウスでは拒絶されないことから自然免疫による抗腫瘍効果である。一方、ワクチン後2週間後に親株のB16を皮下接種すると、腫瘍が拒絶され、これはCD4, CD8T細胞欠損では腫瘍が増大することから獲得免疫による抗腫瘍効果である。





図4 生体内に投与した腫瘍細胞ワクチン(Tumor/Gal)は生体内のNKT細胞、さらにはNK細胞を活性化し、自らは殺傷される。殺傷されたTumor/Galは近傍の樹状細胞により貪食され、貪食した樹状細胞は活性化NKT細胞により成熟化刺激を受ける。このような樹状細胞は腫瘍抗原をT細胞へ抗原提示し、獲得免疫を誘導する。

References
1.       Shimizu K, Goto A, Fukui K, Taniguchi M, Fujii S. Tumor Cells Loaded with a-Galactosylceramide Induce Innate NKT and NK Cell-Dependent Resistance to Tumor Implantation in Mice. J Immunol. 2007, 178: 2853-61.

2.       Shimizu K, Kurosawa Y, Taniguchi M, Steinman RM, Fujii S. Cross-presentation of glycolipid from tumor cells loaded with a-galactosylceramide leads to potent and long-lived T cell mediated immunity via dendritic cells. J Exp Med. 2007, 204: 2641-53.

3.       Fujii S [Review] Exploiting dendritic cells (s) and NKT cells in immunotherapy against malignancies. Trends Immunol. 2008, 29:242-9.

4.       Shimizu K, Fujii S. [Review] An adjuvant role of in situ dendritic cells (DCs) in linking innate and adaptive immunity. Front Biosci. 2008;13:6193-201.


  樹状細胞レベルで決定される記憶免疫誘導機構の解明

 癌細胞や病原微生物を異物として認識、排除するためには効率の良い自然免疫の活性化のみならず、獲得免疫として誘導されたT細胞が記憶免疫まで移行することが理想的です。このような記憶免疫誘導機構において、どのような樹状細胞(サブセット)が、どこで、どのように、どのタイミングで関わっているのか、現在研究を進めています。その一例として、生体内で蛋白抗原を捕捉した樹状細胞(XCR1+cDC)は、T細胞に抗原提示する前に、脾臓のmarginal zone(MZ)領域で pDCと相互作用を起こし、その後T細胞領域(PALS)に移動することで、効率良く記憶T細胞へ誘導されることを示してきました(図参照、Shimizu K et al. J Immunol2013)。この結果は樹状細胞のレベルでメモリーCD8T細胞の誘導が制御されることを示唆するものです。現在当研究チームでは、このような記憶免疫の誘導の制御に関与する、①樹状細胞レベルでのextrinsic factor、及び②T細胞レベルでのintrinsic factorに関して検討を進めています。


図5


Reference

1.       Shimizu K, Asakura M, Shinga J, Sato Y, Kitahara S, Hoshino K, Kaisho T, Schoenberger SP, Ezaki T, Fujii S. Invariant NKT cells induce plasmacytoid dendritic cells (DCs) cross-talk with conventional DCs for efficient memory CD8+ T cell induction. J Immunol 2013,190:5609-5619.

 

 

②癌病態における免疫寛容機構の解明

癌や感染症では、癌細胞や病原微生物と免疫担当細胞との対峙が生体内で繰り広げられています。特に担癌状態では免疫寛容の状態となると病態の進行は加速します。故に免疫を誘導することと同様に、担癌病態での免疫抑制機構を理解することが重要となってきます。マクロファージ、骨髄未熟細胞、樹状細胞などの抗原提示細胞レベルでの免疫寛容機構の解析を進めることにより、免疫寛容の回避に効果的な分子を同定し、癌治療に用いることを目指しています。

Reference

1.       Shimizu K, Asakura M, Shinga J, Sato Y, Kitahara S, Hoshino K, Kaisho T, Schoenberger SP, Ezaki T, Fujii S. Invariant NKT cells induce plasmacytoid dendritic cells (DCs) cross-talk with conventional DCs for efficient memory CD8+ T cell induction. J Immunol 2013,190:5609-5619.
2.       Sato Y, Shimizu K, Shinga J, Hidaka M, Kawano F, Kakimi K, Yamasaki S, Asakura M, Fujii S*. Characterization of the myeloid-derived suppressor cell subset regulated by NK cells in malignant lymphoma. OncoImmunol 2015, 4:e995541.
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